人狼脳で聴く!太田光VS安倍晋三対談【対面VSオンライン?】
今年2月頃から拡散されているこのツイート、ご存知の方も多いかもしれません。
日本全国すべての皆さんへ
— ゆみ (@yumidesu_4649) February 7, 2019
一つ、お願いがあります。
「こちらの、ショート動画を見てもらえませんか?」
お願いします。
太田光 vs 安倍晋三 9条改正は必要か?
安倍晋三「でもあの時にね。もし実際あったらね。(大量破壊兵器が)あったかもしれない訳ですよ。だからもし、いや、無かったけど。」 pic.twitter.com/nMLNfg7oHI
この対談は、2010年8月27日に放送された「太田光の私が総理大臣になったら……秘書田中」というバラエティー番組の最終回での企画によるもの。
対談の全容はこちらから→
爆笑問題 太田光が安倍首相と対談。平和について真っ向討論!!
2007年9月に第一次安倍内閣を退陣した3年後で、当時の首相は菅直人。民主党政権の時代の対談です。
今回9年も前の対談が話題になったのは、現在の安倍首相の方針への批判の意味が強いのだと思いますが、今回わたしが注目したいのは、内容ではなく、話し方。
ちなみに、内容に関してもわたしなりに意見や感想はあるのですが、この記事では書きませんのでご了承ください。
尚、動画を再生できない方もいると思うので以下の記事にて全文書き起こししました。
演説とツッコミ
聴いていて内容以上に気になったのが、太田さんと安倍さんの、語り口の違い。
安倍さんは、滔々と自分の意見を演説調に話すんですよね。相手に質問することがない。
一方で、太田さんは「ツッコミ」が多い。
安倍さんが話している途中で遮るように「ツッコミ」を入れている。
この感じ、すごいデジャヴ。
そう、オンライン人狼派VS対面人狼派って感じだ!と思ったのです。
オンライン人狼プレイヤー風 長文演説タイプ=安倍さん
特徴
途切れることなく自分の意見を話し続ける、演説家タイプ。
インタビューではなく対談であるにも関わらず、自分の意見をアピールすることに集中しているように思う。
この番組がバラエティー番組で、自分は政治のプロ、相手はコメディアンであるという立場の違いがある事が原因で「対談」という意識が低かったのかもしれません。
あるいは、国という大きなものを背負って来た立場だからこそ、日頃から「自分の意見を語弊なく伝える事」に重きを置いているがゆえ、言い回しや補足説明に気を遣った結果、話が長くなるという事なのかも。
原因は何にせよ、聞いていて「ちょっと話長いな」という感じがしました。
メリット
- 自分の主張を語弊なく伝えられる
デメリット
- 他の人が主張する時間を奪ってしまう
オンラインなら、長文が流れて来たって読むも読まないも自由。議論時間を削ってしまう事はありませんが、長々と釈を使って話す人は、対面人狼だと吊られます。
「時間稼ぎをしてる人外目だと思って投票しました!」
実際、私は演説家タイプのプレイヤーにはイライラしてしまいがちです。多少の語弊を招く可能性があっても、シンプルな短い言葉で意見を言ってくれる人の方が好き。
ただし、これは好き嫌いの問題で、「短文ツッコミ」タイプにもデメリットがあると思っています。
対面人狼プレイヤー風 短文ツッコミタイプ=太田さん
特徴
誰かが発言している最中でも、遮るようにツッコミを入れるタイプ。
バラエティー番組では、これは普通の事なのでしょう。気になった部分に即座に反応することで、リアルタイムに周囲と感覚を共有する。
しかし、ツッコミを超えて、相手を妨害する野次のように聞こえる事もあります。
また、「言外のニュアンス」の判断を聞き手側に任せるような抽象的な発言が多く、聞き手によって解釈が分かれかねない印象です。
メリット
- 相手の発言を誘導出来る
デメリット
- 妨害しているように思われる
的を射た的確な指摘で人外を炙り出せれば万々歳なのですが、追い詰めて相手を処刑に導いた結果、その人が霊能結果シロだったりすると叩かれがち。
「議論をリードしたい人外目に見えて投票しました!」
太田さんは自分の意見も発信していてバランスが良かったのですが、このタイプのプレイヤーで、
人への質問>>>>自分の意見
になってしまっていると、不審に思われて吊られる理由になったりします。
「“しどろもどろ”な安倍」?「“子どもっぽい”太田」?
この対談、みなさんにはどちらが「優勢」に聞こえましたか?
繰り返しますが、この記事では対談の内容についてコメントするつもりはありません。(しかも、タイムアップによりこの対談内で両者の主張は一部しか語られませんでした)
ですので、どちらの主張が正しいか、という観点ではなく、「どちらの主張の“仕方”の方が求心力があるか」に着目したいと思います。
「えー」「あー」「やっぱり」ー安倍
ネット上では、安倍さんの話しぶりを「しどろもどろ」と形容しているコメントがたくさん目につきました。
その理由として考えられるのは、「どもり癖」
「えー」や「あー」、「いや」や「やっぱり」「まあ」などの間投詞を頻繁しているんですよね。
はじめ安倍さんは自分の中で既に纏まっている意見を改めて言葉にしている、というような用意周到そうな言葉選びをしているのですが、イラク戦争の話題、ひいては自衛権のあり方についての話題になってくると、だんだんと間投詞が増えてくる。
早口なのも悪影響。
主張自体は冒頭と変わりなく一貫性があるにも関わらず、口調が変化するせいで、
焦っている?相手に痛いところを突かれたの?
そう思われて「しどろもどろ」だと言われてしまうのでしょう。
「(核を)持ちましょうよ」ー太田
太田さんの方が優勢に聞こえる、という意見が多い一方で、「太田さんは子どもっぽい」と指摘するコメントも多々見られました。
その原因と思われるのが誇張表現。
「アメリカ以上の軍隊を持ちましょう」「核を持ちましょう」といった発言で、実際、動画内でも金美齢さんや相方の田中さんに笑われています。
しかしこれは、文脈から整理すれば「アメリカ以上の軍備を持てないのであれば、(安倍さんが懸念している)“他力本願”の状況は変わらないじゃないか→ならば改憲しても意味はないんじゃないか(→だから改憲より先に、軍備強化以外の方法でアメリカに物申す力をつけるべきではないか)」という主張のための逆説的否定(反語)の表現の様子。
だけど、「核を持ちましょう」の部分だけ抜き出したら、太田さんの意見は少しも理解出来ません。
インパクトが強すぎて、真意が伝わり辛い。
そのため非現実的な意見に見えてしまうのだと思います。
真似したい部分
話題を変えさせないー安倍
安倍さんの話しぶりで上手いな、と思ったのが、相手に誘導されないように指摘を躱すところ。
動画2:40頃〜
「やっぱり自分たちの憲法ですから、自分たちの手で、やっぱりちゃんと書いていこうと。特に憲法にね、前文にね、
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
と、こうありますよね。これはやはりまさに、他力本願なんですよ。人に任せよう。で、この精神は、やっぱり私は間違ってると思うんですね」
太田「人っていうのは誰なんですか」
安倍「平和を愛する諸国民なんですよ」」
この部分。
後半での太田さんの主張を踏まえれば、太田さんは恐らく「アメリカに頼っている現状を他力本願だと懸念しているのか?」と安倍さんに確認したいのだと思われる。
つまり、「人っていうのは誰なんですか」の答えとして、「アメリカです」という返事を誘導したい。
しかし安倍さんはそこをしらっと切り抜けている上に、この後の自分の主張に利用している。
「安倍「で、これほんとに平和を愛する諸国民なんですか?っていうことですね。この国々、ほとんどみんな戦争してますよ」
「日本が人まかせにしている相手の“人”とはだれか」という質問に対し、「『平和を愛する諸国民』と憲法で示している相手」だと誤魔化し、そしてその『平和を愛する諸国民』が実際には戦争をしているのが問題だ、という風に、相手の思惑には乗らず具体的な国名を避けたまま、自分の主張を続けている。
なんというか、狡猾です。しかし、太田さんは「人ってアメリカですか?」と聞いた訳ではないから、この回答が許される。
あえて空気を読まない。相手の発言を利用する。
不誠実な感じがして信用が減りそうですが、さりげなくなら真似したい技術ですね。
瞬発力の高さー太田
太田さんの何が強いって、瞬発力ですよね。頭の回転が早く、疑問点を見逃さない。
以下で紹介する流れは、太田さんが強いな、と思った部分であると同時に安倍さんが失敗したと思う部分なのですが、上述した
「日本国憲法は『平和を愛する諸国民』に他力本願している→だけど実際には『平和を愛する諸国民』とされる人々が戦争を起こしている」
という流れの中で、なぜか安倍さんがイラク戦争の話を深掘りしてしまうんですね。
安倍「あのー、当然ね、国際社会の中においてですね、戦争がない方が良いに決まってるし、いわば戦争っていうのはやっちゃいけないっていう事に、まあ強調してますよ。
だけどそうは言ったって、ベトナム戦争はあったし、湾岸戦争も、イラク戦争もあったし、(太田「文句言やいいじゃん!」)アフガンでも。
しかし、イラク戦争においてもね、私は、当時の小泉政権の官房副長官でしたよ、で、日本はアメリカの立場を、支持を、しました。
それはまあ様々な状況を判断して、私はそれは間違ってなかったと思いますよ。
ただ、大量破壊兵器について見つからなかったという事は、(太田「なんで間違ってなかったんですか」)残念だったと思いますけどね」
太田「アメリカは間違ってたって言ってますよね、イギリスも」
ここ、本来安倍さんは深く触れなくて良かったと思うんです。
「『平和を愛する諸国民』は戦争をしている」ということを示す為の具体例のひとつに過ぎなかった訳で、イラク戦争についても名前だけあげて、「だから憲法前文の前提は間違っている」という主張に繋げれば良かった。
安倍さんの中には、イラク戦争での判断を肯定したい理由も話しておきたいという気持ちがあったのかもしれませんが、少なくともこの文脈で語ろうとしていた主張からは「脱線」してしまう墓穴だった。それを太田さんは見逃さなかった。
途中の、「文句言やいいじゃん!」も(安倍さんには黙殺されていますが)、価値ある指摘だったと思います。この瞬発力の高さで、視聴者である私たちの共感を集める事が出来る。
相手の意見をよく聞いて、疑問をすぐに口にする。
揚げ足とりみたいで意地悪ですが、周りを味方に出来る強力な武器ですね。
議論が好き
以上、人狼脳で聴いた太田光VS安倍晋三対談、思ったことを雑多に書き殴ってみましたが、人狼プレイヤーのみなさんは、どう思われましたか?
この対談、タイムアップで議論終了となったあと、最後に以下のような会話がなされています。
太田「えー!これからなのにぃ〜!」
安倍「いやー、太田さんがこんな真剣になって議論するとは思わなかった」
(中略)
安倍「議論するの結構好きなんですよ」
太田「じゃあもっとメディアどんどん出ればいいのに」
この会話を聞いて、(思想や人格、政治方針といった事は置いておいて)議論への姿勢に関してだけ述べるなら、安倍さんにも太田さんにも好感が持てるなあと思いました。
人狼が好き、議論が好き、って話をすると、「相手を言い負かすのが好きなの?」と聞かれることがありますが、そうじゃないんですよね。
相手と真剣に意見を交換出来る場が好きなんです。
太田さんはこの対談以外でも安倍さんへの批判をよくしていたにも関わらず、安倍さん主催のお花見会に参加した、という事で「権力に負けた」「へたれた」等々、非難をされているのですが、それに対してラジオで「みんなもっと(直接安倍首相に)会えばいいのに」と発言しています。
もちろん、我々一般人はそう簡単に政治家と議論する場を貰える訳がありませんから、太田さんの発言が適切とは思わないのですが、要するに太田さんは反対意見を持っている相手と直接対話する事に意義があると言ってるんですよね。
これは「議論」をする人間にとってめっちゃくちゃ大事だと思うんです。
反対意見と真っ向から向き合って、お互い真剣に考えること。
これが楽しいから、議論が好き。
人狼プレイヤーには、「相手が間違っている。自分が正しい」という姿勢を崩さない人がいますが、自分が正しかったとしても、周りの人を、そして意見の異なるその相手を、説得出来なければ負けてしまう。
だからこそ、相手を説得するために、まずは相手を知る、理解する。そして同じ土俵で真剣に戦うという姿勢を見せなければいけないと思うんです。
話し合いを放棄してしまうタイプのプレイヤーさんにはぜひ、相手と向き合う楽しさ
を知って欲しいなあ、なんて思いました。
わたしむしろ、言い負かされる方が快感ですよ!